研究課題
本研究の目的は、肺癌の副腎転移における臓器特異性の発現機構の解析を行うことである.肺癌の副腎転移の研究に適した細胞培養系および動物実験系は存在しなかったため、本研究の第一段階は実験系の確立である.今年度は、ヒト非小細胞肺癌副腎転移モデルの作成に適切と考えられる細胞株のスクリーニングを施行した.実験に供したヒト非小細胞肺癌のcell-lineのうち、ヌードマウスへのtransfectionにて副腎への転移が確認されたのは、現在までのところLK-2、PC-14、IA-5の3株であった.これらの細胞株ではいずれも副腎転移の発生頻度は低く、当該年度内では再移植による継代での副腎転移の発生頻度の向上は明らかではなかった.今後、継続して複数の継代が必要であると考えられる.以上の結果より、実験系の確立までには当初の計画より実験動物数が多くなることが予測される.そこで、実験の効率化のため、平行して新規のスクリーニング方法につき検討した.ヌードマウスをsacrificeし、副腎を摘出して最大割面とし、組織培養法を用いて十分なviabilityを維持した状態で、コラーゲンゲル上でin vitroの培養を行った.副腎割面上にsingle cell suspensionとした肺癌細胞PC-14を移植し、7日間の培養後に回収した.これを3継代繰り返した後、ヌードマウスへ再移植した.結果、得られた細胞株は副腎転移能を有することが確認された.一方、対象として用いた細胞株のRERF-LC-AIでは、副腎割面上で細胞の増殖を維持することができなかった.以上の結果より、この方法を用いて、以降の実験経過を短縮できる可能性が考えられる.
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