肺腫瘍に対する凍結療法の局所根治性を高めるためには、個々の腫瘍に対する理想的な凍結範囲を決定し、そのような凍結域を作るための凍結端子の必要本数、刺入方向、留置位置を事前にシュミュレートする技術の確立が不可欠である。本研究は胸部のCT画像からその腫瘍を根治的に凍結治療するのに必要な至適な凍結端子の本数、刺入方向、留置位置を事前に計算できるプログラムソフトを開発し、臨床試験に導入することを目的とした。 平成19年度においては凍結端子が1本の状態での、凍結端子の径と正常肺の凍結範囲と凍結時間の関係が再現性のある回帰曲線をもって示されることを実験的に証明した。すなわち全身麻酔下に体重30kgの仔豚を右開胸し、肺動脈血流の影響を避けるため、肺動脈から十分距離が離せる右肺後葉を選択して20mmに深さまで凍結端子を刺入した。この深さで肺の凍結を行うと肺の表面が凍結領域の最大割面になる。またこの深さでは端子と肺動脈との距離が10mm以上確保できるので太い血管の凍結領域に及ぼす影響を排除できる。この端子の周囲にできる凍結領域の経時的な拡大の様子を固定したビデオカメラで10分間続的に記録した。この一連の実験を直径2.6mmの端子と3mmの端子それぞれにおいて5回ずつ測定し、凍結範囲yに対する時間tの自然体数1次式を最小二乗法で求めた。この数式をコンピュータソフトに代入することにより、周囲に太い血管がない状態での肺における凍結領域をシュミュレートすることができるようになった。
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