研究概要 |
これまで手術検体などから樹立した肺癌細胞株の中で,本年度は肺腺癌原発巣から樹立した細胞株H1224L(HLA-class I陽性,HLA-classII陰性),および癌性胸水から樹立した細胞株K420PL(HLA-class I陽性,HLA-class II陽性)の二つの系で,自己腫瘍特異的T細胞クローンを樹立し,以下の結果を得た。 (1)H1224L:H1224LにCD80を移入し,リンパ節リンパ球と共培養することにより,HLA-class I拘束性自己腫瘍特異的CTL clone(CD8陽性)を樹立した。このCTLcloneは,HLA-A31拘束性に他家肺癌細胞株を認識した。cDNAexpression cloning法にて,CTL cloneの認識する抗原遺伝子を単離した。この遺伝子はRibosomal protein L19(RPL19)をcodeしていた。さらにCTLの認識する9-merのepitope peptideを同定した。RPL19は,正常肺と比べ肺癌細胞に高発現していたことより,新規の過剰発現抗原の可能性が示唆された。H1224症例は,術後にリンパ節再発に対して切除標本があり,同定した抗原の原発巣、転移巣での発現解析を今後する予定である。 (2)K420PLは肺腺癌術後の経過観察中に発症した癌性胸水から樹立したHLA haplotype lossを認める癌細胞株である。K420PLにCD80を移入し,手術時に採取保存していたリンパ節リンパ球と共培養し,自己腫瘍を特異的に障害するT cell cloneを得た。このcloneはCD4陽性であり,自己腫瘍に対しHLA-DR拘束性にIFN-gを産生した。さらに,他科肺癌細胞株をHLA-DR1502拘束性に認識することより,CD4+T cellに認識される共通抗原の可能性が示唆された。
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