研究概要 |
本研究は脳循環自動調節能のメカニズムを、ウサギくも膜下出血モデルを用い分子生物学的に解明することを目的とした. 平成19年度の内容と同様の実験を継続して行い, 統計学的有意差を得る頭数に到達した. ウサギにおいて48時間間隔で大槽内に自家動脈血を2回注入することでくも膜下出血を作成した. 5日後に以下の評価を行い, それぞれの結果が得られた. I. 脳循環の自動調節能の評価 : 頭蓋骨に小開頭を施し、ここにlaser-Doppler flowmetryのプローブを留置し脳血流量の相対値を測定した. 昇圧剤を投与し人為的に血圧を変化させた場合の脳血流量の変化を測定し、自動調節能の障害の有無・程度を評価した. 正常対照群では血圧が150mmHgまでは脳血流量に有意な差異はみられなかったが、くも膜下出血群では、血圧が100mmHg以上となると、血圧に依存し脳血流量の有意な増大がみられた.これにより、自動調節能の破綻が示された. II. 脳内細動脈のリモデリングの評価 1. 分子生物学的検討 : リモデリングの分子マーカーとしてミオシン重鎖アイソフォームのSMembとSM2に関して, 蛋白質レベルを免疫染色で, mRNAレベルをreverse transcription-polymerase chain readtion(RT-PCR)で検討した. その結果, 正常対照群では、SM2の染色のみが示されたが、クモ膜下出血群ではSMembの染色性が増大した. RT-PCRではくも膜下出血群で、SMembのmRNAの有意な増加が示された. 2. 定量的組織学的解析 : 灌流固定後に脳を摘出し薄切し、脳内細動脈の血管内腔、血管壁厚、平滑筋数などを計測した. その結果, 正常対照群に比べ、クモ膜下出血群では血管内腔面積の減少、血管壁厚の増大、平滑筋数の増加などが有意にみられた. 以上から, くも膜下出血後には, 自動調筋能の破綻がみられ, 脳内細動脈のリモデリングがその原因の一つであることが示された.
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