現在は計画のI-1クモ膜下出血モデルの作製の段階である。 当初はSDラットに吸入麻酔後、仰臥位で大腿動脈から自己動脈血を採取して、前方から直接clivusを経由して脳幹前方硬膜にアプローチする方法で行う予定であった。実際にこの方法を数回おこなって検討すると、アプローチの方法が動物への侵襲がつよく、安定したモデルを作製することが困難なことからこの方法を断念した。これに変わり、定位的に針を前大脳縦裂に刺入して自己動脈血を注入したモデルを作成することとした。このモデルは当初のモデルが脳底動脈に脳血管れん縮を作成するモデルであったのに対して、前頭蓋底に血液を注入するため、中大脳動脈、前大脳動脈を中心に脳血管れん縮が作成するモデルである。作成手順は体温を37℃に保ちながら、腹腔麻酔下にSDラット頭部を定位装置に固定する。次に穿頭術を施行し、針を前大脳縦裂に刺入する。ここで、あらかじめラットの尾の動脈に刺入しておいたラインから動脈血を採取して、200ulの動脈血をゆっくりと脳圧、脳循環をモニターしながら注入する。脳圧は大後頭孔に硬膜を穿刺してモニタリングし、脳血流は前頭葉に血流モニターを設置して経時的変化を観察した。コントロール群では生理的食塩水を注入する。24時間以後に組織摘出して検討している。現在、このモデル作成の手技を安定化させ、再現性の高いクモ膜下モデル、脳血管れん縮モデルを得るために改善し、脳、血管組織を摘出してクモ膜下出血の評価と脳血管れん縮の程度のバラツキなどを検討中である。注入する血液量が多すぎたり、注入する速度が高すぎて、脳圧が上昇するモデル作成後のラットの生存率は極端に減少した。
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