研究課題
統合失調症は、思春期から青年期に発症することが多く、全世界で生涯発症率が約1%と高率で、約2割の患者は中等度から重度の残遺症状を残し生活に支障をきたすとされており、患者本人のみならず、家族や社会にとっても精神的、社会的、経済的な苦痛・損失は計り知れず、その早急な発症機構解明と治療法開発が望まれている。Dysbindinは、独立した複数の研究グループにより独立した集団を使い、これまで少なくとも5報以上、その統合失調症脆弱性遺伝子としての可能性を支持する報告があり、統合失調症の脆弱性遺伝子のーつとしての可能性が高い。当該研究は、統合失調症の脆弱性遺伝子Dysbindinの神経細胞における分子生物学的機能を解析した。Human brain cDNA libraryを用いたyeast two-hyrid systemによるscreeningで、Dysbindinと結合するタンパク質としてSNX5(Sorting nexin5)を同定した。SNX5は、膜タンパク質の輸送・sortingに関与することが報告されている。神経細胞による細胞性免疫染色法により、DysbindinとSNX5は細胞質で共局在し、in situ hybridization法を用いた解析では、両者とも脳の広範囲で発現を認めた。また、Real-time PCR法を用いた解析では、両者とも全身の組織に広範囲の発現を認めた。Texas Redにより可視化したTransferrinを用いたEndocytosis解析では、両者の相互作用がTransferrin受容体の取込み・分解に関与することが示唆された。既にDysbindinの発現が統合失調症の患者脳で低下していることが報告されている。従って、以上の結果は、Dysbindinの発現異常により、神経シナプスなどの神経伝達物質受容体の発現制御に異常を来たし、これが統合失調症の引き金になる可能性が示唆された。
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BMC Cell Biology (in press)
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