研究課題
我々が開発した増殖型単純ウイルスは腫瘍細胞特異的なウイルス複製が得られるよう工夫されたものだが、同時に抗腫瘍免疫を惹起することも確認されている。本研究では、A/Jマウスに免疫原性の低い同種同系のneuroblastoma細胞株の皮下腫瘍モデルを作成した。それにA/Jマウスから樹状細胞を誘導して増殖型単純ウイルスで処理したものを樹状細胞にパルスしてから皮下腫瘍モデルに投与し、抗腫瘍効果が増強させるか否かを検討した。A/Jマウス(6週齢:雌)を用いてNeuroblastoma細胞株N18の皮下腫瘍モデルを作成し、A/Jマウスの大腿骨より採取した骨髄細胞をGM-CSFおよびIL-4で1週間培養して未熟な樹状細胞を得た。N18皮下腫瘍がおよそ8mm大に成長した時点(投与後5日)で、予め腫瘍細胞に増殖型単純ウイルスを感染させて処理したものを樹状細胞にパルスした後、腫瘍近傍の皮下に接種した。N18パルス群および増殖型単純ウイルス感染群、コントロール群の3群において比較検討した。我々の研究室では増殖型単純ウイルスがウイルスの投与量の増加により抗腫瘍効果が増大するが、N18蛋白を樹状細胞にパルスしただけでも強い抗腫瘍効果が惹起されることが確認された。しかし、この系では培養で腫瘍に最低限のウイルスを感染させただけで腫瘍細胞が死滅するためか、増殖型単純ウイルス感染群ではコントロール群よりは腫瘍増大を抑制する傾向があったが、N18パルス群ほどの抗腫瘍効果は認められなかった。今後は、腫瘍細胞の近傍に樹状細胞と併用して投与する系を検討していく予定である。
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