研究概要 |
(1)20例の視床または被殻病変の中枢性脳卒中後疼痛患者において運動線維と感覚線維をMRIのDiffusion tensor imageで描出して、線維の描出率を健常側に対する患側の比で表現した。症例によってはまったく描出できないこともあった。患側の描出率と経頭蓋磁気刺激療法による一次運動野刺激による除痛率との相関を検討したところ、運動線維および感覚線維の両者の描出率と相関が得られたが、感覚線維の描出率とより相関が得られた(Goto T, Saitoh Yet al, Pain,2008)。この結果は病巣の主座が被殻であっても感覚中継核である視床腹外側核およびその線維連絡の保持が経頭蓋磁気刺激による一次運動野刺激による除痛効果とよく相関することが示されたことになる。 (2)アカゲザルの脳マップと上記所見を比較して、注入部位と注入量を検討しているが、注入部位としては視床腹外側核を想定している。注入量としては、少量注入を繰り返していくしかないと思われる。しかし、その少量とはいえ、どれだけを注入するかは難しい問題であるため、下記の予備実験を施行した。 (3)予備実験として、ラットを用いて、視床出血モデルの作成を行った。コラゲナーゼ(200-50U/m1)を1.0-3.0・1、定位的に注入を行い、数日後に還流固定による処分を行い、脳の連続切片を作成して、出血病巣のサイズ、広がりを検討した。しかし、現在のところ、モデルとして、適当な注入コラゲナーゼの濃度、注入量を正確に決定できなかった。ラットでは病巣を作成することができても、痛み行動を評価することは困難であることが示唆された。
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