研究概要 |
我々は,拡散テンソル画像によるびまん性軸索損傷の定量評価を行い予後判定の画像診断基準の作成を目指して本研究を開始した.拡散テンソル画像Diffusion Tensor Imaging(DTI)およびDTI tractographyを用いて軽度から中等度頭部外傷患者35人(びまん性脳損傷25人,非びまん性脳損傷10人)における軸索の拡散異方性を急性期に測定した.統計画像解析の手法(Statistical Parametric Mapping SPM)を用いてfractional anisotropy(FA)値を解析したところ脳梁膨大部におけるFA値の低下が統計学的に有意なことが示された. 一方,MRIのラジオ波で動脈の血流を標識するArterial Spin Labeling(ASL)による新しいperfusion MRI脳血流測定法(以下,ASL法)が近年開発されてきた.本法では,血液と脳実質の磁化に対して処理を施し,血液そのものをマーカーとする.これにより,被爆もせず,薬剤の投与も必要としない全く非侵襲的な脳血流測定法が可能となった.この方法を用いることによって,拡散テンソル画像とともにMRIか用いて測定でき,被験者への負担が軽減きれることのみならず,被験者からの同意を得やすくなることから対象症例の増加が見込まれ,格段に正確な画像診断基準を確立できる.しかし,当初の計画申請時には、まだ実用に耐えうるASL用のMRIとソフトウェアが当施設に存在していなかった.ところが,幸いなことに2007年末にこれらのモダリティが当施設に導入されることになった.そこで,繰り越しを行い、本研究にASLによる脳血流測定を加え,20-80歳の正常ボランティアに対して脳血流測定を実施し,ASL法による脳血流測定における正常値をほぼ確立することができた.
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