研究概要 |
我々は,拡散テンソル画像によるびまん性軸索損傷の定量評価を行い予後判定の画像診断基準の作成を目指して本研究を開始した.拡散テンソル画像Diffusion Tensor Imaging(DTI)を用いて軽度から中等度のびまん性脳損傷20人における軸索の拡散異方性(Fractional Anitotropy:FA)を急性期に測定した.びまん性脳損傷の患者は,正常者と比べて脳梁膨大部におけるFA値が有意に低下していることが判明した.さらに,急性期の脳梁膨大部と前頭葉白質のFA低下が慢性期の認知機能障害と有意に関連することも見出した.これらの結果をJournal of Neurosurgeryに投稿し,acceptされた(2011年掲載予定). 一方,MRIのラジオ波で動脈の血流を標識するArterial Spin Labeling(ASL)による新しいperfusion MRI脳血流測定法(以下,ASL法)が近年開発されてきた.本法では,血液と脳実質の磁化に対して処理を施し,血液そのものをマーカーとする.これにより,被爆もせず,薬剤の投与も必要としない全く非侵襲的な脳血流測定法が可能となった.この方法を用いることによって,拡散テンソル画像とともにMRIを用いて測定でき,被験者への負担が軽減されることのみならず,被験者からの同意を得やすくなることから対象症例の増加が見込まれ,格段に正確な画像診断基準を確立できる.新たに本研究にASLによる脳血流測定を加え,20-80歳の正常ボランティアと頚動脈狭窄症患者の脳血流測定を実施し,ASL法による脳血流測定における有用性をほぼ確立することができた.これらの結果をAmerican Journal of Neurologyに投稿し,acceptされた(2011年掲載予定).
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