本研究の目的は、異常なフィードバックがかかった幼弱な大脳皮質がどのような軸索・樹状突起形成、髄鞘形成をするのか、それは早期の薬物治療やリハビリテーションによって修正が可能か否か、を解明することである。19年度は脳性麻痺ラットの作成と痙縮の測定を行った。 1.脳性麻痺ラットの作成:生後14日目のmale SDラットを開頭し、右大脳半球皮質に脳損傷を作成した。呼吸、哺乳能力の回復を確認した後、通常環境下に生育させた。7日目まで運動能力測定、誘発筋電図測定を行った(下記)後、断頭し脳の形態を確認した。脳室が拡大し、白質が形成不全に陥っていることが確認された。この脳室拡大は対側にまで及んでいた。術中の出血による髄液循環障害から水頭症に陥ったためか、脳萎縮のためか現在検討中である。後者であれば損傷大脳皮質から投射される対側への神経線維が減少した可能性が示唆される。このモデルの問題点はラットの神経障害が強すぎること、および出生から14日後であるため中枢神経が発達していることである。今後はより軽微な損傷を幼弱なモデルに用い、新生児脳損傷に近似した状態を作成する。 2.痙縮の測定:歩行・歩容、運動能力をBBB scoreで測定したところ、脳損傷作成1日後は左上下肢に弛緩性麻痺がみられ、7日目までに徐々に痙性が現れた。痙縮を誘発筋電図で測定した。脛骨神経刺激による腓腹筋の誘発筋電図では患側のM waveが低下し、H reflexも低下した。当初の予想に反しH/M比が上昇しなかったため、次年度はモデル作成の変更も視野に入れている。
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