悪性グリオーマにおいて腫瘍幹細胞を分離同定すること、及びその性状を明らかにすることにより、悪性グリオーマに対する新しい治療法を開発することを目的とした。方法としてヒト悪性グリオーマ手術摘出組織の初代培養およびヒト悪性グリオーマ細胞株からSP細胞群をFACSを用いて分離し、グリオーマ幹細胞としての性質を有するか、その分化能、自己複製能、腫瘍形成能について検討した。また、SP細胞とNon SP細胞の運動能、浸潤能についても解析した。結果:ヒト悪性グリオーマ組織の初代培養細胞から、neurosphereを形成し、CD133陽性となる細胞群の分離に成功した。また、U251細胞株からSP細胞群を分離し、この細胞群が神経細胞に分化誘導されることを明らかにした。一方、これらのグリオーマ幹細胞では、元細胞のグリオーマ細胞と比べ、有意に運動能および浸潤能が高いことが明らかとなった。これらの結果により、グリオーマ幹細胞の存在が明らかになったことと共に、今後、治療法に向けて本細胞の解析を更に進めていくことが可能となった。今後の研究として、これらの幹細胞の腫瘍形成能をヌードマウス移植により検討すること、およびDNAマイクロアレイにより、SP細胞とNon SP細胞での遺伝子発現の比較検討することを予定している。
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