研究課題/領域番号 |
19591692
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小柳 泉 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (40250435)
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研究分担者 |
寳金 清博 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90229146)
秋山 幸功 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50404653)
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キーワード | 脊髄空洞症 / キアリ奇形 / 脊髄浮腫 / 組織間液 / 脊髄損傷 / 脊髄循環 |
研究概要 |
ヒト脊髄空洞症の成因の分析:自然環境で発生する脊髄空洞症は動物では極めて少なく、ヒトにおける脊髄空洞症の成因に関して、MRIによる分析を行った。キアリ1型奇形では、空洞周囲の脊髄実質に組織間液の増加があり、これは中心部の白質と灰白質に認められた。その髄内の分布より、中心管および髄内静脈からの吸収障害がその原因と考えられた。また、同様の浮腫性変化は、頚椎症性脊髄症にも認められた。灰白質とH質を主体とした組織間液の増大が約3%の症例にあり、白質内の静脈還流の局所的障害による脊髄血管関門の破綻が重要な役割を果たすと考えられた。さらに、脊髄周囲の髄液還流障害が浮腫性変化を増長させると考えられた。除圧術後には浮腫性変化は一時的増加がみられるが、これは圧迫レベルの頭側へ進展する傾向がみられた。これらは、脊髄における組織間液の流れが頭側へ向かう傾向があることを示している。 ラットモデルでの検討:C8-T1レベルのクリップ圧迫によるラット脊髄損傷における髄内変化と微小血管損傷を組織学的に引き続き検討した。また、外傷による脊髄白質障害が脊髄伝導に及ぼす影響について、未梢神経刺激による脊髄誘発電位を用いて基礎的データを得た。 研究成果の意義:ヒトおよびラットの研究からは、脊髄内には髄内血管系が関与する血液循環の他に、組織間隙と中心管が関与する髄内組織間液の循環があり、これらは相互に密接に関与している。さらに組織間液は髄液と比較的自由な交通があり、髄液腔あるいは静脈系の還流障害は組織間液の増大、中心管の拡大、脊髄空洞への発展につながることがわかってきた。このような組織間液の循環障害が、どのような機序で白質伝導障害や灰白質での神経細胞障害につながるのかは今後の課題となる。
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