研究概要 |
[目的]頚部頚動脈狭窄性病変におけるプラーク内出血の役割および分子機構を解明することを目的とした。[方法]頚動脈内膜剥離術(CEA)の際に得られた内膜剥離標本80例を対象とした。ホルマリン固定標本あるいは凍結切片を、VEGF,HIF-1α,Ets-1,CD34,VEGF-Receptor(Flit-1),SMC,Macrophageに対する各種抗体を用いた蛍光免疫染色、Western blot法にて評価し,プラーク内出血との関連について検討した。[結果]VEGFの発現は、粥状硬化巣内の泡沫細胞に強く発現し、大部分はmacrophageで一部はSMC由来であった。VEGFの発現するfoamce11は、plaque coreには少なく、fibrous cap、plaque shoulderに多く存在し、しかも剥離内膜深層でプラーク内出血の周囲に特に多く認められた。Flit-1の発現は、ほぼVEGFの発現と一致していた。また、ETS-2、HIF-1αはplaque深部のプラーク内出血周囲に発現を認め、その発現はほぼVEGFに一致していた。血管のマーカーであるCD34は、plaque内の新生血管に一致して認められた。[結論]頚部頚動脈の粥状硬化巣内におけるVEGFは、大部分macrophag由来の泡沫細胞に発現しており、その誘導因子の一つとしてHIF-1αが示唆され,またEts-1もHIF-1α,VEGFによって制御されている可能性が示唆された。Macrophageは酸化LDLを取り込んでecholucentな不安定プラークの形成に関与しており、プラーク内出血はVEGFとその上流・下流の因子が直接・間接的に関与していることが示唆された。
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