研究課題
昨年度に引き続き、マウス脊髄損傷モデルを用いて、未分化なES細胞と骨髄間質細胞を同時移植することにより、ES細胞による腫瘍形成が抑制されるか、また骨髄間質細胞はES細胞の分化誘導を制御する可能性を検討した。方法は、マウス由来ES細胞(GFP標識)を、胚様体形成した後レチノイン酸処理することにより神経系細胞へ分化誘導を行い、これを移植細胞とし、骨髄間質細胞はマウスの大腿骨から分離、培養を行った。一方、Th10の椎弓切除を施したC57BL6マウスにcontusion modelを作製。第1群(N=10)はレチノイン酸処理したES細胞を1.5×104個移植、第2群(N=10)にはES細胞と同数の骨髄間質細胞を同時移植した。また、損傷60日後に移植を行い、経時的な行動学的観察、及び移植後の組織学的評価を行った。その結果、長期観察においても、骨髄間質細胞同時移植群では、マウス脊髄損傷モデルに移植した未分化成分を含む神経幹細胞は対照群のような腫瘍形成を認めず、nestin、MAP2陽性の神経細胞へと分化誘導を認めた。つまり、骨髄間質細胞は脊髄損傷部位で、未分化な細胞の分化誘導を行い、未分化細胞の腫瘍形成を抑制しているとの結果がえられた。本研究での結果は、今後ES細胞移植治療の臨床応用において、ひとつのハードルをこえる有望な方法と考えられるが、未だpreliminaryなもので、実際の治療にむけてはさらなる実験成績の積み重ねが必要であると考えている。
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Cell Transplant 18
ページ: 39-54