研究概要 |
ラット脳にコラゲナーゼを注入して脳出血モデルを作成し、9日目に病巣部にGFP標識したマウスES細胞由来神経幹細胞(ES-NSC)10^6個およびBrdU標識した骨髄間質幹細胞(BM-MSC)10^6個を共同移植した。移植後8週間の行動学的観察の後に、近傍脳を免疫組織学的に観察した。共同移植群とES-NSCあるいはBM-MSC単独移植群の間に、行動学的改善に有意な差は認められなかったが、共同移植群ではES-NSC単独移植群に比べ病巣近傍脳に多数のES細胞由来MAP2陽性細胞を認め、共同移植により病巣近傍脳におけるES由来神経細胞の分化とその生着効率が上昇することが判明した。In vitro実験では、4-/4+EB法(胚様体のレチノイン酸処理によるES-NSC誘導)にて未分化ES細胞を含むES-NSC細胞分画を調整し、BM-MSCと共培養を行った。ES-NSC細胞分画の単独培養に比べ、BM-MSCとの共培養では、ES-NSC細胞分画からOct3/4,Utf1,Nanogなどの未分化ES細胞関連の諸遺伝子発現は早期に消失した。また、BM-MSCにNGF,GDNF,BDNFなどの神経栄養因子の遺伝子現を確認した。これらより、BM-MSCがES-NSC細胞分画に残存する未分化ES細胞の神経系分化に促進的に作用するものと考えられた。実験動物に腫瘍形成が認められなかったこと、共同移植による病巣近傍に多数のES由来神経細胞を認めたことは意義深く、共同移植療法の有用性を示すものである。しかし、脳出血モデル動物の行動学的改善に至らなかったことは克服すべき課題であり、この対応にはマウス→ラットの異種移植ではなく同種移植実験を試みるべきと考えている。(In vitro実験成績の一部は2007年11月上海国際幹細胞リサーチシンポジウムで発表した。)
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