本研究の目的は脳血管性障害における神経細胞・神経線維の障害程度を定量的に評価し、さらにその後の回復過程を画像化することである。そのために、拡散テンソル画像・脳灌流画像を用いた。どちらもEPI法を用いたMRI撮像シーケンスであるが、アーチファクトに敏感である欠点があった。 拡散テンソル画像に関しては、従来の撮像シーケンスを見直し、本研究の目的に最適化したシーケンスを独自に開発した。スライス数をこれまで3.5mm程度であったものを、脂肪抑制を併用することにより、1.6mmにまで薄くすることに成功した。このことにより、拡散テンソル画像において、等方ボクセルサイズでの近似3D撮像を行うことができるようになり、脳内出血症例は後頭蓋窩病変症例などの、これまではアーチファクトで評価困難であった症例においても、神経線維を描出することが可能となった。さらにEPI法に加え、PROPELLER法を応用し、アーチファクト軽減・信号雑音比向上を達成した。 脳灌流画像においては、これまでの研究から脳血管障害症例での最適条件はほぼ確定したので、臨床症例に応用した。具体的には脳主幹動脈閉塞症例を中心に、血行再建術前後に脳灌流画像を撮像し、T1値を同時に撮像することにより、定量化を行った。最終的に、放射性同位元素を用いた手法と比較しその精度を確認した。 経時的評価を行うことにより、神経機能回復を客観的に評価する手法を確立した。
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