【目的】Autorcine mortility factor(AMF)は、悪性腫瘍の浸潤に関与する遺伝子として知られており、我々は悪性グリオーマにおいて、悪性度の高い腫瘍ほどAMFおよびその受容体遺伝子発現が強いことを報告した。今回我々は、良性腫瘍である下垂体腺腫においてAMFおよびその受容体(AMF-R)遺伝子がどのような関わりをしているかについて分子病理学的に検討した。 【対象・方法】対象は、当科で手術摘出した32例の下垂体腺腫(非機能性:14例、GH産生性:8例、プロラクチノーマ:6例、ACTH産生性:4例)である。これらの摘出組織の凍結標本およびパラフィンブロックを使用した。方法は、凍結標本を用い、RT-PCR法で既知のAMFおよびAMF-Rプライマーを使用し、それらの発現を確認した後、in situ hybridization法でそれら遺伝子の組織内局在を検討した。【結果】RT-PCR法では、全ての腺腫型でAMFおよびAMF-Rの発現を認めた。In situ hybridization法では非機能性腺腫で最も発現が強く、次いでACTH産生性、GH産生性の順に発現を認め、プロラクチノーマでは他に比べ有意にAMFおよびAMF-Rの発現が低下していた。 【結論】下垂体腺腫においてAMFおよびAMF-Rは、悪性腫瘍のような浸潤能とは別にautocrineで腫瘍細胞制御を自ら行っている可能性が示唆された。腫瘍型では、AMFおよびAMF-RmRNAの発現順は、非機能性>ACTH>GH>プロラクチノーマであった。特に、プロラクチノーマでは発現が他に比し有意に低下しており、この腫瘍型のみAMFおよびAMF-Rの影響を受けにくい可能性が示唆された。
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