研究概要 |
悪性gliomaにおける遺伝子異常の解析が進む中で、細胞増殖亢進・細胞死抑制など悪性腫瘍としての基盤をなす生物学的特徴に直接的に関与する因子が明らかとなってきた。腫瘍細胞では増殖・生存のためにそのような促進因子への依存度が増大すると考えられることから(pathway addiction)、これらの因子を新規標的として阻害する分子標的治療が、注目されている。特に細胞内のシグナル伝達を亢進させる機能を発揮するEGFR遺伝子の遺伝子増幅や発現亢進は膠芽腫を中心に悪性gliomaで高頻度に検出され、そのtyrosine kinase domainを標的とする小分子阻害剤が既に臨床試験で試みられている。しかしシグナル下流での遺伝子異常(PTEN,Akt,mTORなど)がその効果を減衰する作用を呈し、複合阻害のストラテジーが重要と考えられてきた。我々は13種ものヒトglioma細胞株を用いて、これら重要なシグナル伝達系分子の発現をWestern blot法にて確認した。これらの機能を抑制する特異的阻害剤であるgefitinib,AG1478,LY294002,rapamycinなどを用いて、分子標的治療単独での効果をMTTアッセイで評価した。これらの治療により、標的分子のリン酸化は減少し、生存シグナルの減弱化に伴い、細胞死を誘導するTRAlL,temozolomide,cisplatinなどの抗腫瘍治療薬との併用効果を現在検討中である。
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