研究概要 |
樹状細胞からのIL-10分泌やIL-10の細胞内シグナル伝達を抑制し、癌免疫療法に適した免疫賦活型樹状細胞を誘導することを目的として研究を進め、19年度までに以下の研究成果を得た。まず、IL-10-siRNAやSTAT3-siRNAをヒトグリオーマ細胞に導入し、その細胞とヒト成熟樹状細胞との融合細胞を作成することで、効率的にsiRNAを樹状細胞内に導入することを試みた。グリオーマ細胞へのIL-10-siRNAの導入効率は、通常の導入法によって安定的に得られることをIL-10の定量で確認した。さらに、このsiRNA導入グリオーマ細胞と樹状細胞との融合細胞を作成し、その融合細胞からのIL-10分泌が抑制されていることを同様に確認した。STAT3-siRNAに関しては、これが過度に導入されることで、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導してしまうため、安定的な融合細胞の作成が困難であった。次に、IL-10-siRNA導入融合細胞において、細胞表面マーカー(CD80,CD83,CD86,HLA-DR)の発現を確認した。過去の報告から、IL-10の作用により、樹状細胞表面のCD80やCD86の発現が減弱することが判っているため、IL-10-siRNA導入融合細胞においてこれらの細胞表面マーカーの発現は増強すると予想していたが、実際にはコントロール細胞と比較して変化が表れなかった。siRNA非導入の樹状細胞単独あるいは融合細胞をリコンビナントIL-10と共に培養してもこれらの細胞表面マーカーに変化がないことが確認されたので、本実験系においてIL-10は細胞表面マーカーに影響を与えないと判断した。その理由は、樹状細胞が十分に成熟しているためであると考えられ、従って、本実験系において誘導された成熟樹状細胞ではSTAT3-siRNAによるIL-10のシグナル伝達抑制の必要性は低いと考えられた。
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