研究概要 |
悪性星細胞系腫瘍の生存率は悲惨な状況である。そんな中、temozolomide(TMZ)が認可され、大きな役割を持つものと注目されている。しかし、TMZは延命効果を示すものの、十分ではなく、また抵抗性が大きな問題である。特にメチル化修復酵素であるMGMTの関与が示唆され、MGMTを抑制・枯渇することで耐性の克服が期待されている。しかし、0^6-BG、BCNUやPCZを用いた検討では満足すべきものではない。そして、我々は長年にわたりIFN-βに注目しており、TMZとの相乗効果を期待している。そこで、6種類(AI72,AM38,T98G,U87MG,U138MG,U251MG)のヒト悪性神経膠腫(膠芽腫)細胞株を用いて以下の検討を行った。 TMZによる細胞増殖抑制効果:反応には、MGMTのメチル化と蛋白発現が関与することが示された。T98GとU138MGは、MGMTがメチル化しておらず(methylation-specific PCR(MSP)、realtime PCRを用いたmRNAの定量でも確認)、蛋白発現(Western-blotting)を認め、他の細胞株と比べTMZに対して耐性であった。MSP法の正確性に疑問があるとの報告があるが、今回の検討では、MSP法とdirectsequenceによる結果は一致していた(MSP法の信憑性を確認)。 IFN-βによる細胞増殖抑制効果:各培養細胞では容量依存性に効果が認められた(また、cytotoxicではなくcytostaticに作用している事を確認した)。 TMZとIFN-βの相乗効果:TMZに対して耐性であるT98GとU138MGにおいて、IFN-βとの併用はsynergeticな(細胞増殖)抑制効果が認められた。臨床での併用療法に期待がもたれる。特に、臨床における薬剤濃度において(10μM TMZ、10IU/ml IFN-3)、単剤では認められなかった有意なMGMT mRNAの発現の減少が認められた(T98Gにおいて、realtime PCRを用いたmRNAの定量)。
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