研究概要 |
[目的]Bach1ノックアウト(KO)マウスの脊髄損傷モデルを用いて、損傷脊髄におけるHO-1発現の変化および脊髄傷害の抑制効果を検討した。[方法]成体雌のKOマウスおよび野生型(WT)マウスを用い、NYUimpactorで第10胸椎高位の脊髄損傷モデルを作成した。KOとWTマウスで以下の項目を解析し比較した。損傷後12時間から42日目までの運動機能をBasso mouse scale(BMS)を用いて経時的に評価した。損傷後3日目の脊髄におけるHO-1発現を免疫染色、Western blotで解析した。42日目の脊髄において、白質をLuxol Fast Blue染色で定量化し、さらに神経細胞数をNeuNの免疫染色で評価した。また、3日目の脊髄におけるアポトーシスをTUNEL染色およびcleaved-caspase-3のWestern blotで解析した。[結果]BMSでみた運動機能は、損傷後1日目以降、WTマウスに比べてKOマウスの方が平均点が高く、3, 7, 21, 28, 35, 42日目で有意差がみられた。Western blotでのHO-1の発現はKOマウスの方が有意に多く、免疫染色でもKOマウスのHO-1陽性細胞数がより多くみられた。損傷後の脊髄白質、神経細胞数は共に、KOマウスの方が有意に多かった。損傷脊髄におけるTUNEL陽性細胞数およびcleaved-caspase-3の発現はKOマウスが有意に少なかった。[考察]本研究から、WTマウスに比べてBach1 KOマウスでは、脊髄損傷後にHO-1の発現が有意に多く、脊髄白質や神経細胞の傷害、アポトーシス、運動機能の障害が有意に少ないことが分かった。したがって、Bach1 KOマウスでは抗酸化作用をもつHO-1の発現が増加することにより、酸化ストレスによる脊髄傷害が抑制されたと考えられた。[結論]脊髄損傷においては、Bach1のノックアウトによって損傷脊髄内のHO-1発現が増加し、酸化ストレスによる脊髄傷害が抑制される。
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