整形外科領域における良性骨腫瘍摘出後に生じる骨欠損部の補填材料として近年、人工骨であるss-リン酸三カルシウム(βTCP)が臨床応用されている。その骨形成、骨強度に関しての研究は行われているが、人工骨を用いた骨腫瘍の腫瘍細胞増殖抑制効果という観点からは十分に研究がなされていない。 研究計画の最終年度として、リン酸オクタカルシウム(OCP)による細胞増殖抑制効果を骨肉腫細胞株および筋芽細胞(C2C12)を用いて検討した。 共同研究者である東北大学顎口腔機能創建分野の鈴木らの研究グループはOCPの高温度下連続合成法(特3115642)や室温合成法を開発している。本研究において(1)OCPをコーティングしたプレートを作製し、プレート上で代表的な骨腫瘍である骨肉腫細胞株を培養することが可能であることを確認した。(2)培養細胞の増殖能を調べたところプレート上の単純培養と比較し培養3日目で腫瘍細胞の増殖は抑えられたが、OCPを加水分解したHydolyzate(アパタイト)と有意差はみられなかった。(3)(2)と同様にプレート上にC2C12を培養したところ、培養3日目以降OCPの結晶性状により細胞増殖の抑制効果が異なっていた。 最近、OCP結晶の微細構造(寸法、結晶性など)の違いが骨芽細胞の増殖および骨形成能に影響を及ぼすことが明らかとなった。 このことから今後、異なる結晶性状を持つOCPを開発することにより、整形外科領域の骨軟部腫瘍の増殖を抑制する可能性が出てきた。
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