平成19年度は収束超音波による抗腫瘍作用の解析をマウス固形肉腫を対象に行った。 1.細胞の継代と腫瘍細胞浮遊液の調整:Sarcoma180をマウス腹腔内で継代し実験腫瘍とした。 2.超音波照射装置:日立中央研究所製の伝播方向の約長さ8.5mm、幅2mmの限局性の部位に超音波を収束させることが可能なtransducerと、安価な無線機用の増幅器やコントローラーを組み合わせ用いた。 3.収束超音波照射:Sarcoma180細胞3.0×10^5個を含む腫瘍細胞浮遊液をマウスの皮下に注入し、固形腫瘍が径2cmになった時点で、マウスを固定台に設置し、腫瘍部を専用の水槽で水没させ、XYZ stageにつなげた超音波画像モニターで腫瘍部を描出できるよう位置決めしモニターで観察しながら、収束超音波装置で腫瘍部へ単回照射した。照射は周波数2MHz、出力5W/10Wの2種類で5秒間おこなった。水槽内は脱気水を満たし、38度に保った。 4.評価ならびに結果(1)経時的な腫瘍の観察と組織学的検討:経時的に腫瘍最大径を観察すると、対照では徐々に腫瘍径が増大していたが、照射群では増大は軽度で優位に小さかった。(2)アポトーシス:照射群の壊死部周辺で旺盛なアポトーシスが観察され、照射群で有意に多かった。(3)マウス生存率:照射群では対照群に比べ有意に生存率が良好であった。(4)電顕では腫瘍の細胞内小器官の変性が特徴的に観察された。
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