我々は神経誘発電位に代わる新しい非侵襲的な神経機能診断方法の開発を目的として神経磁界測定を行っている。動物実験の結果より、神経障害部位における誘発磁界の変化は解明されつつあり、これを臨床応用すべく健常者・患者における磁界測定を行なっている。 具体的には、H20年度においては健常者約10人、頚椎疾患患者約50人の頚部での磁界測定を行った。刺激は、胸椎部での硬膜外電極での刺激や、上肢の末梢神経の刺激にて行っている。約90%の被検者において頚部を伝搬する脊髄誘発磁界を捉えることに成功した。磁界計測が可能であった患者のうち8割程度の患者で障害部位の特定が可能であり、画像所見、神経学的所見、電機生理学的検査などとも一致が見られた。 なお、この障害部位診断は、現在は慣れた検者が波形から主観的かつ経験的に推定しているが、磁界から電流限解析を行なうことにより、その電流源から定量的解析を行い障害部位診断を行う試みも行っている。この解析システムはH21年度前半には確立可能の予定である。 非侵襲的なヒト用脊髄神経磁界測定装置としての完成に向けて、データを整理し、実際の臨床応用可能なシステムを整備している段階である。 また、腰椎疾患の機能診断を目的として、腰椎での神経誘発磁界測定も行なっている。センサー、測定条件の洗練により、3月現在では健常者において100%の磁界検出率となっている。腰椎疾患患者における測定を行う予定であり、頚椎と同様、腰椎においても非侵襲的な機能診断検査として臨床での使用が可能と考えられる。
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