研究概要 |
【方法】定量的RT-PCR法により骨肉腫の臨床検体を用いてNotchシグナル関連遺伝子の発現について検討した。Notchシグナルの特異的阻害剤であるGSIやNotchによって活性化される転写因子であるRBP-jKsiRNAをもちいて骨肉腫に対するnotchの機能を検討した。ヌードマウスに骨肉腫細胞株を移植しGSIを投与することによる抗腫瘍効果を検討した。GSIを投与した骨肉腫細胞株の細胞周期と細胞周期関連遺伝子の発現を検討した。Notchシグナルの下流因子と骨肉腫増殖・細胞死の関連をsiRNAを用いて検討した。 【結果】定量的RT-PCR法において骨肉腫患者腫瘍組織では10例中10例でNotch2の発現上昇を認めた(1.3-57倍)。一方でNotch1は10例中9例で低下していた(0.03-0.86倍)。NotchのリガンドであるJAG1は10例中10例で発現上昇していた(3.6-309倍)。ターゲット遺伝子のHESIは10例中6例で発現低下していた。一方で他のターゲット遺伝子であるHEY1は10例中8例で発現上昇していた(1.6-12倍)。HEY2も10例中9例で上昇していた(2.9-106倍)。GSIとRBP-jκ siRNAを用いてNotchシグナルを抑制するとin vitroにおいて腫瘍増殖を抑制した。次に骨肉腫移植ヌードマウスにGSIを投与するとin vivoにおいて骨肉腫の増殖が抑制された。また骨肉腫細胞でNotchシグナルを抑制すると細胞周期がG1 arrestしていることを見出した。さらに細胞周期を正に制御するサイクリンD,E,c-myc,SKP2の発現が抑制され、逆に細胞周期を負に制御するp21^<cip1>の発現が増大していることを見出した。また発現上昇していたHEY1をノックダウンするとin vitroにおいて腫瘍増殖を抑制した。現在ヌードマウスを用いてin vivoの機能解析とさらなる細胞運動・転移能の評価を含めさらなる詳細な機能解析を行っている。
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