研究概要 |
ラット髄核留置(NP)モデルを用いて、アシアロエリスロポエチン(Epo)が神経保護作用を有するか否かについて検討を行った。実験系はNPモデルに、未投与のNP (-)群、Epoを投与するNP-Epo (+)群、Epoに溶媒を投与するNP-Veh群とsham群の4群を設定した。行動学的検討では、NP (-)群とNP-Veh群では、疼痛閾値の低下が術後28日間持続し、sham群と比較して有意に低下した。NP-Epo (+)群では、術後14日以降に疼痛閾値が上昇し、術後28日間には、未治療のNP (-)群と比較して有意に閾値が回復した(p<0.05)。また、組織学的検討では、神経損傷マーカーであるATF-3の発現を比較した。NP-Epo (+)群にて、術後7日、14日と28日目で、NP (-)群と比較してATF-3の発現が抑制された(p<0.05)。我々は、NPモデルにてのサイトカインの発現について報告した(Tachihara H, et al, Spine33,2008)。サイトカインの刺激によりp-38が活性化され、アポトースに関与することが知られている。今回は、活性化されたp-38をウエスタンブロット法にて発現をEpo投与の有無による相違を検討した。NP-Epo (+)群では、未治療のNP (-)群と比較して有意にリン酸化p-38の発現量が少なく、リン酸化が抑制された(p<0.05)。以上のことから、腰椎椎間板ヘルニアに類似したラット髄核留置モデルを用いて、Epoはリン酸化p-38の発現を抑制し、神経損傷の程度は未治療群に比較して弱く、早期に疼痛閾値が回復することが明らかになった。本研究の結果から、腰椎椎間板ヘルニアの治療薬として期待できる。
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