本研究の目的はdrug delivery system技術を基盤とし、組織再生学的手法と組み合わせることで椎間板の変性程度に応じた再生方法を確立することを最終目標としている。平成20年度では多血小板血漿(PRP)とゼラチンハイドロゲル粒子(粒子)による椎間板変性抑制のメカニズムの解析や適応となる変性椎間板のMR画像の評価を行った。日本白色家兎の髄核を部分吸引し、2週間飼育することにより家兎変性椎間板モデルを作製した。 PRP含浸粒子を変性椎間板内に注入したPRP含浸粒子群、 phosphate-buffered saline(PBS)含浸粒子を注入したPBS含浸粒子群、 PRP単独注入群、および穿刺のみを行うSham群を作製した。注入後、経時的に椎間板組織を摘出し、以下の評価を行った。 PRP含浸粒子の髄核細胞に対する増殖効果を評価するためProliferating cell nuclear antigen(PCNA)免疫染色を、PRP含浸粒子の髄核細胞へのアポトーシス抑制効果を評価する目的でTUNEL染色を実施した。適応となる注入時の変性椎間板はPfirrmann分類でGrade IおよびGrade IIであった。全群で髄核および内層線維輪にPCNA陽性細胞を認めなかった。全群で髄核にTUNEL陽性細胞を認め、全髄核細胞におけるTUNEL陽性細胞の比率は、 PRP含浸粒子群は他の群と比べ有意に低値であった。以上から、本法による椎間板再生効果を望める変性椎間板のMR画像のGradeはIおよびIIであり、 PRP含浸粒子による髄核細胞への明らかな細胞増殖効果を認めなかったが、アポトーシスを抑制する可能性があると考えた。本結果は、第37回日本脊椎脊髄病学会、第29回日本炎症再生医学研究会、第24回日本整形外科学会基礎学術集会、55th Annual Meeting of the Orthopaedic Research Societyで学術発表を行い、椎間板変性に対する新しい治療法として注目を集めた。以上の結果をまとめ、Tissue Engineeringに論文を投稿中である。
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