今年度の目的は椎間板性疼痛を評価し得る椎間板変性モデルを作成することにあった。椎間板性疼痛の評価には行動薬理学的検討を行った。モデルとしては、SDラットを用いて、注射針で線維輪を穿刺した群、第4、6尾椎に0.9mmキルシュナー鋼線を刺入し、アルミ製リング作成したイリザロフタイプの創外固定器を装着し、圧迫を加えない群(非圧迫群)ならびに椎間角状変形がおこるまで圧迫を加えた群(圧迫群)を作成した。注射針刺入では尾椎に痛覚過敏は認められず、創外固定器装着では、その重量のため尾椎の逃避反応を鋭敏に捉えることができず、この圧迫群では尾椎にかかる圧迫力が不明であるため新しい椎間板圧迫モデルを作成した。0.7mmキルシュナー鋼線を刺入し、圧迫力が150-200gになるように襷がけのゴムバンドで固定した。このモデルでは尾部の運動麻痺は認められず、処置側では処置後10日まで、圧刺激に対する痛覚過敏が、処置の末梢では処置後7日目から処置後3週まで熱刺激に対する痛覚過敏が認められた。椎間板に圧迫力を加えることで同部の皮膚、圧迫部位の末梢に痛みが発現することをはじめて証明した。このモデルの椎間板変性の程度は痛覚過敏がみられない注射針による穿刺モデルに比べて、組織学的に重篤であった。変性に伴いコラーゲン、アグレカン、プロテオグリカンの減少が認められた。椎間板変性がみられ、疼痛行動がみられたラットの椎間板にはLeukocyte Common Antigen、マクロファージ、インターロイキン-1β、一酸化窒素合成酵素、Tumor necrosis factor-α、ケモカインの増加が観察された。本研究から椎間板変性に伴う疼痛発現モデルが確立された。今後は、このモデルで、骨形成蛋白を用いて、除痛と椎間板再生を引き起こす有効な椎間板内注入療法を検討する予定である。
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