痛覚過敏、アロディニアがみられるラット尾椎椎間板変性モデルを用いて、骨髄幹細胞(MSC)(1×10^<3>/1μl)、骨形成蛋白(bone morphogenetic protein(BMP)-7)、transfbrming growth factor(TGF)β、insulin-like growth factor(IGF)(それぞれ0.2μg/1μl)、platelet rich plasma(PRP、1μl)を処置部の尾椎椎間板内に注入した。BMP-7、TGF-β注入ラットでは尾部の痛覚過敏、アロディニアの改善が得られたが、MSC、IGF、PRP注入では有意な感覚障害の変化はなかった。コラーゲン、アグレカン、プロテオグリカン合成能ならびに蓄積量、DNA合成、DNA量、コラーゲン量をみると変性モデルの椎間板では減少していたが、BMP-7、TGF-β、MSC、IGF、PRP注入椎間板ではこれらの物質の増加が経時的にみられた。BMP-7、TGF-β注入椎間板ではインターロイキン、tumor necrosis factor-αの発現減少が観察された。BMP-7、TGF-βが痛みのない椎間板再生に有効である可能性を示した。椎間板内注入物質(BMP-7)が硬膜外に漏出した場合に神経損傷や異所性骨化などの有害事象がおこらないかどうかを検討した。BMP-7を含侵したGel foamを腰部神経根上に留置しても疼痛関連行動は認められず、組織学的にも異所性骨化は経時的になく、有髄神経線維数の減少はみられなかった。BMP-7を用いた椎間板内注入療法は安全に臨床応用可能であることを示唆する結果であった。 本研究は、変性椎間板を痛みなく再生させる安全な生物学的治療法の確立の一助となる。
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