平成13年国民生活基礎調査によると、本邦の要介護の原因の中で関節疾患は11%を占めている。そのなかで変形性膝関節症は最も頻度が高く、加齢に伴い罹患率が増加することが示されている。わが国の高齢化は急速に進んでおり、変形性膝関節症患者が増加することは明らかである。そのためこの疾患の病態を理解し、適切な保存的あるいは手術的治療を行うことは、本疾患により要介護となる患者を救済していくために必要不可欠である。 この変形性膝関節症の原因や治療を理解するうえで、膝関節の軸が変わることによって生じた力学的負荷の変化が関節軟骨にどのような変化を与えるかを知ることは重要である。本研究では(1)日本白色家兎を用いて、関節内に侵襲を加えずに関節外のアライメントを変化させることで関節軟骨の変形性変化を生じる動物モデルを確立こと、(2)変形性膝関節症自然発症マウスが変形性膝関節症を発症する原因が膝関飾外のアライメントの変化であることを示し、今後このマウスを使用して変形性膝関節症の病態や治療に関する研究を行うための基礎データを蓄積すること、を目的とした。 (1) に関しては、骨切りによってアライメントを変化させて変形性膝関節症を発症させることは困難であった。今後骨切り後に運動負荷を加えることによって変形性関節症を発症させうるか検討する必要がある。 (2) に関しては、組織学的には10週齢、20週齢から膝蓋大腿関節の関節軟骨の異常所見が個体差、左右差なく認められた。また組織学的に膝蓋大腿関節の変形性変化が再現性よく発症する原因を骨形態学的に評価したところ、脛骨の内捻がその原因の1つであると考えられた。今後はこの変形性膝関節症自然発症マウスを用いて、変形性関節症の進行予防のための保存療法である運動療法やヒアルロン酸の関節内投与の影響を評価していく予定である。
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