研究課題
エストロゲン欠乏による椎間板変性の機序として、卵巣摘出ラットを用いて椎体軟骨終板の変性が椎間板組織への拡散障害を引き起こすことを昨年報告した。そこで、軟骨細胞に対するエストロゲンの直接作用を明らかにする目的で、マトリックス代謝に重要とされるTGF β-MKK6経路とエストロゲン受容体(ER)の共役因子の1つであるGRIP1に着目し、ER転写活性ならびにII型コラーゲン遺伝子(co12a1)転写に対する相互作用について解析した。軟骨前駆細胞株ATDC5を用いてレポーターアッセイをおこなうと、GRIP1は、MKK6CA、ERα導入により誘導されたER応答性転写活性を17β-estradiol(E2)(10^<-9>M)存在下で強力に上昇させた。さらにE2刺激は、MKK6および転写共役因子p300と協調してSox9依存性のco12a1エンハンサー活性を有意に増強した。ATDC5に外来性に導入したGRIP1は核内でERαと共局在した。また、co12a1 mRNA発現は野生型マウスの初代培養軟骨細胞(PC)ではE2またはTGFβ1刺激により上昇し、TGFβ1受容体阻害剤によって抑制されたが、ERα欠損マウス(ERαKO)のPCではE2刺激による誘導作用は抑制されていた。ERαKOでは野生型と異なり、加齢とともに長幹骨の成長軟骨板が完全に閉鎖し、15ヶ月齢において椎体軟骨終板に明らかな変性像がみられた、したがって軟骨細胞において、エストロゲン依存性の転写活性はMKK6、GRIP1とともに正に調節され、E2はERαを介してMKK6-p38とともにSox9依存性のco12a1転写活性誘導に相乗的に作用することによって軟骨マトジックスの恒常性を維持しているものと考えられた。以上より、閉経によるエストロゲン欠乏は軟骨変性のリスクファクターのひとつであり、椎体軟骨終板を介して間接的に椎間板変性に影響を与える可能性が示唆された。
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