自家腱組織を用いた膝前十字靱帯再建術後の早期スポーツ復帰の問題点として、リモデリング過程が長期に亘ることや、再建靱帯の力学的強度が健常な靱帯組織には及ばないといった指摘がなされている。そこで、本研究の目的は、再建靱帯の成熟化の促進を早期に、かつ最大限誘導する安全な手技として、すでに臨床応用がなされている低出力超音波パルス刺激(以下LIPUSと略す)が、有用か否かを細胞レベルで明らかにし、将来的に臨床応用が可能であるかの検証を行うことにある。 自家腱組織を用いて靱帯再建術を施行した症例の1〜2年後に、内固定材抜去とsecond lookを行い、outgrowth法により再建靱帯組織由来線維芽細胞を調整した。細胞がコンフルエントに達した後に、出力強度30mW/cm^2、120mW/cm^2のLIPUS刺激を1日20分間、連日照射し、30日間培養を行い、経時的に細胞層を回収してコラーゲン分析を行った。細胞増殖数は、各群間で差は認められなかったが、コラーゲン含有量は対照群と比べ、LIPUS群で高値を示し、出力強度依存的に増加した。さらに、生理的架橋の量を規定するリジルオキシダーゼの発現量は、出力強度依存性に増加しており、この結果と一致するように、未熟架橋および成熟架橋の量は有意に高値を示した。 これらのことから、再建靱帯組織由来線維芽細胞に対するLIPUS照射は、出力強度依存的にコラーゲンの量を増加させるのみならず、靱帯型の架橋パターンを変えることなく、生理的架橋の量を増加させること、さらには、コラーゲン基質の成熟速度を促進することが明らかになった。
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