鍼治療による筋弛緩作用を明確にする目的で、筋緊張モデルラットを作成し、介入として鍼刺激を行い筋緊張の変化を観察した。筋繁張モデルは、ラットの下腿三頭筋に電気刺激による強縮負荷「刺激頻度:80Hz(刺激幅1ms:矩形波)、刺激強度:5mA、刺激条件:2分間の無刺激期間を介して、計4set」を与えて作成した。筋緊張の評価には静的・動的筋張力測定器(ねずみ用トルク)を用い、麻酔下に足関節を30度、40度、50度に背屈(他動)し、足底に加わる下腿三頭筋の伸長陸張力を筋緊張の程度として測定した。測定は、強縮負荷前、強縮負荷5分後、1日後、2日後、3日後に行った。鍼刺激は強縮偵荷直後から5分間、下腿三頭筋5カ所(腓腹筋起始部2カ所、アキレス腱移行部3カ所)に行った。その結果、無治療コントロール群では強縮偵荷5分後に伸畏性張力は有意に増加し、1〜3日経過後にはいずれも強縮負荷前値に戻った。一方、鍼台療群では強縮偵荷5分後にはコントロール群と同様に、強縮換荷前値と比較して有意な増加を示したが、その増加量はコントロールと比較して有意に低下した。しかし、コントロール群では強縮負荷後1日では強縮潰荷前値に回復したのに対し、鐡治療群では回復傾向にはあるが、強縮負荷前値までは戻らなかった。このことから、鍼治療は強縮による筋緊張に対し、その筋を弛緩させる作用は有するが、筋に鍼を刺入することにより、局所的な炎症を引き起こし、強縮後翌日に自然経過として見られる筋緊張の回復を遅延する可能性が考えられた。今回の結果は人と比較して非常に小さいラットの筋に、人と同様の刺激を行った結果であり、過刺激となった可能性が高く、今後の課題として、鍼の直径や刺入深度を変更した場合の結果も必要と考えた。また、今回はpreliminaly な研究として、鍼の刺入部位も一般的なものとしたが、刺入部位の違いによる筋緊張緩和作用の変化についても検索する必要性を考えた。
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