研究概要 |
1.ヒト椎間板組織における炎症と変性について 【内容】手術にて摘出した椎間板ヘルニア細胞を単層培養し,炎症性サイトカインであるIL-1βで刺激を行い,遺伝子レベルにおける,RAGE,Aggrecanの発現量をReal-timePCR法を用いて比較検討した。 【結果】IL-1βの刺激により,有意にRAGEの発現の増加を認めた。Aggrecanの発現に関しては,種々の報告から,減少することが予想されたが,有意な減少は確認できなかった。 【意義,重要性】関節軟骨では,炎症性サイトカインが,RAGEの発現を増加させることにより,変性を導くことが確認されており,椎間板でも同様にRAGEの発現が増加することが確認された。しかし,椎間板ヘルニア細胞には,髄核と線維輪が含まれており,細胞外基質に含まれる物質を量的に評価することが困難であり,ヒトを用いることの困難さが確認された。2.ウシ椎間板組織におけるAGEs,RAGEの発現について 【内容】(1)抗AGEs抗体,抗RAGE抗体を用いた免疫組織学的手法により,ウシ髄核組織におけるAGEs,RAGEの局在を検討した。以下の(2)(3)について,RealtimePCR法を用いて解析,比較検討した。(2)ウシ髄核培養細胞を各種濃度のAGEsで刺激し,Aggrecanの発現量。(3)IL-1βで刺激し,RAGEの発現量。 【結果】(1)免疫染色にて,髄核の核周囲を中心に,AGEs,RAGEの発現を認めた。(2)AGEs各濃度の刺激により,Aggrecanの発現が有意に低下した。(3)IL-1βの刺激により,RAGEの発現量が有意に増加した。 【意義,重要性】ウシ髄核組織はヒト髄核組織と類似していることは報告されている。上記実験1から,ヒトの組織を用いる限界が示され,今回は,(1)ウシの髄核にAGEs,RAGEを認め,AGEs刺激によりAggrecanが減少した事から,AGEs、RAGEcomplexの研究に,ウシの髄核組織を用いることが可能であることが確認できた。 (2)IL-1β刺激により,RAGEの発現量が増加したことから,炎症によるAGEs-RAGEcomplexの増加が,椎間板変性の悪性サイクルを起こす可能性が示唆され,若年者での椎間板変性や椎間板性疼痛などに関与している可能性が考えられた。
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