研究概要 |
近年、運動器の変性疾患の中で最も代表的な変形性関節症(以下、OAとする)に関する基礎研究は様々な角度から行われているものの、多因子疾患ゆえ未だ結論が出ていないのが現状である。実際の臨床において、OA患者のほとんどが軟骨変性に先立って滑膜炎、関節液の貯留を生じている。すでに研究代表者(眞島任史)が確立した動物OAモデルにおいても軟骨変性に先立ち明らかな滑膜炎、関節液の貯留を認めている(ORS Transaction, 2004)。以上から我々は力学的ストレスなどの過剰負荷が滑膜組織へ加わることにより、滑膜組織で発現する遺伝子がOAの発症・進行に大きな影響を与えているという仮説を立てた。本研究の目的は、1)OAのごく初期の段階において滑膜組織で過剰発現している疾患の発症に関わる候補遺伝子を検出すること、2)検出された候補遺伝子の発現をsiRNAで抑制することによりOAの発症・進行への関与を証明することである。 家兎OAモデルのOA初期の時点で両膝から滑膜組織を摘出し、それぞれのmRNAを抽出し、Subtractive Hybridization法およびColony Hybridization法を用いて、右膝(sham側)に比して左膝(ACL切断側)の滑膜組織で過剰に発現している遺伝子を検出した。次に、他の家兎の滑膜組織での再現性を確認した。さらにReal-Time RT-PCRにて、特に発現量の差が大きい遺伝子を選択し、その中から候補遺伝子を決定した。エレクトロポレーション法を用いて周術期に候補遺伝子のsiRNAを導入し、術後4週で軟骨の評価を行ったところ、siRNA投与群でcontrol-siRNA投与群よりも明らかにoA進行を認めた。またsiRNA投与群の滑膜でMMP-13の発現が上昇していた。以上からoA初期の段階では候補遺伝子がOA進行を抑制している可能性が示唆された。
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