研究概要 |
[目的]本年度は,脂肪組織および滑膜組織由来の幹細胞をin vitroで関節軟骨細胞と共培養し,幹細胞の軟骨分化に及ぼす影響を検討することを目的とした。[方法」白色家兎の皮下より脂肪細胞を,膝関節より滑膜細胞と関節軟骨細胞を単離した。脂肪細胞と滑膜細胞は単層培養のもとで2回継代・増殖させ,関節軟骨細胞はアルジネートビーズ内で三次元培養し実験に用いた。これらの細胞を,条件1:半透膜を用いた接触を避けた共培養,条件2:混合し互いに接触する条件のもとでの共培養,の下,ウシ胎児血清入り培養液で培養した。これらのプロテオグリカン(以下PG)産生量を測定し,さらにSox-9,I,II型コラーゲン,アグリカン等の軟骨分化の指標となる基質蛋白の発現量をRT-PCRにより定量的に評価した。対照群として腱組織由来の線維芽細胞との共培養を行った。[結果]実験に使用した脂肪細胞および滑膜細胞は軟骨分化誘導培養液のもとで,PG産生増加と,Sox-9,II型コラーゲンの有意な発現増加を認め,軟骨分化能を有することが確認された。2細胞間に接触のない条件1では,対照群と比してPG産生量に差は認めなかったが,滑膜細胞はSox-9の発現上昇などの軟骨分化の傾向を示した。2細胞間に接触のある条件2では,対照群と比してPG産生量の増加傾向を示し,さらにSox-9、II型コラーゲン・アグリカンの有意な発現増加を示した。脂肪細胞でも同様の傾向がみられたが,有意差はみられなかった。[考察]我々は本研究において,滑膜由来幹細胞がinVitroでの関節軟骨細胞との共培養により,軟骨分化の傾向を示すことを初めて明らかにした。これは軟骨細胞からの液性および接着性因子により,幹細胞周囲の微小環境が軟骨に分化しやすい状態に維持されるためと推察される。今後は,この現象をin vivoで証明していく予定である
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