外傷による骨軟骨欠損、骨壊死による骨軟骨損傷、変形性関節症による軟骨欠損の修復を目的として、マイクロフラクチャー法、自家骨軟骨柱移植術(モザイクプラスチティー)、自家培養軟骨移植術等が行われている。しかし、モザイクプラスチティーや自家培養軟骨移植術では広範囲は欠損を修復することができなかった。また、広範囲の欠損には軟骨移植のためのスカフォルドが必要であるが、異種コラーゲンを使用するため、プリオンなどの感染のリスクがあった。そこで、異種コラーゲンを使用せず、人工合成によるコラーゲン・スカフォルドを用いて生体に安全な軟骨培養を可能にして、生体活性セメントディスクを骨欠損部側に用いて人工コラーゲン・スカフォールドと組み合わせた複合体を作製して、骨軟骨欠損の修復を検討した。人工コラーゲン・生体活性セメントディスク複合体に白色家兎由来の軟骨細胞を注入して培養すると、軟骨細胞の増殖能とプロテオグリカンの産生能はウシtypeIIコラーゲン・セメントディスク複合体に軟骨細胞を注入群と比較して良好だった。Real-time PCRを用いた検討では、培養3週の時点で人工コラーゲン・セメントディスク複合体におけるtypeIIコラーゲンとアグリカンのmRNAの発現はウシtypeIIコラーゲン・セメントディスク複合体の約4倍に増加していた。人工コラーゲン・セメントディスク複合体に軟骨細胞を注入して白色家兎の膝関節の骨軟骨欠損部に移植したが、人工コラーゲンスカフォルドの強度がまだ不十分なため一定の成績を得ることはできなかった。しかし、人工コラーゲン・セメントディスク複合体の強度が改善できればプリオンなどの感染のリスクのないスカフォルドとして利用可能と考える.
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