研究概要 |
前年度までに、骨組織再生能を促進しうる骨髄細胞の培養条件を決定した(Acta Orthop 78:285-292,2007)。今年度は、多血小板血漿ゲル内での3次元培養および臨床研究を主に研究を継続した。多血小板血漿ゲル内での骨髄細胞培養では、in vitroでの細胞増殖は血小板濃度依存性に促進されたが、骨芽細胞への分化能は血小板濃度には依存しなかった。一方、in vivoでの骨形成は血小板濃度依存性に促進された。つまり、細胞移植には高濃度の血小板を有する多血小板血漿が有効であることを示した(J Bone Joint Surg 90-B:966-972,2008)。したがって、in vitroでのアルカリフォスファターゼ活性の高い培養骨髄細胞を、血小板濃度の高い多血小板血漿と組み合わせることにより、最も効果的な骨組織再生が期待できることが確認された。以上の結果に基づいて、培養骨髄細胞と多血小板血漿の移植を併用した仮骨延長術の臨床研究を継続した結果、70肢以上の臨床データを集積し得た。そこで、臨床成績と骨髄細胞数および分化度、多血小板血漿の数および濃度との関連を統計学的に検討した。脛骨延長では、細胞移植による骨形成促進作用は大腿骨延長に比べ劣り、移植細胞数、分化度、血小板濃度と臨床成績との明らかな関連は認めなかった。一方、大腿骨延長では細胞移植により仮骨形成は著明に促進され、治療期間が有意に短縮した。細胞治療による仮骨促進効果は、多血小板血漿の数や濃度との関連は認めなかったが、移植する骨髄細胞の数および骨芽細胞への分化度に関連していた。つまり、アルカリフォスファターゼ活性の高い大量の培養骨髄細胞の移植により、大腿骨延長における仮骨形成のさらなる促進が期待されることが明らかとなった。
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