研究概要 |
【研究の背景】特発性大腿骨頭壊死症(idiopathic osteonecrosis of the femoral head,ION)の背景因子はステロイド関連が過半数を占めている。遺伝子解析を利用してステロイド性ION発生の危険性が高い患者を同定し、効率のよい予防法を開発することを目的に研究を行っている。 【具体的内容】近年、酸化ストレスがIONの病因の一端を担っていると報告がされた。そこで酸化ストレス関連物質の遺伝子多型がIONの発生予測因子として有望であると考え、これらを解析対象遺伝子として遺伝子多型解析を行った。酸化ストレスに関連するeNOS T-796C多型はION発生との関連について相反する結果が報告されている。日本人を対象にした解析では、この遺伝子多型はION発生と関連が無いことを明らかにした。酸化ストレスに関する重要な物質であるquinoid dihydropteridine reductase, 6-pyruvoyl tetrahydropterin synthase, NADH/NADPH oxidase p22 phox, superoxide dismutaseおよびheme oxygenase-1の遺伝子多型解析を行ったが、ION発生と関連は認めなかった。 【意義と重要性】eNOS T-786C多型とION発生についてGlueckらはコーカソイドでは関連があったと報告し、Kooらは韓国人(モンゴロイド)ではなかったと報告した。この遺伝子多型を解析すると日本人(モンゴロイド)のION発生と関連がなく、Kooらの報告と一致した。eNOST-786C多型とION発生について人種差が存在することが窺われた。日本国民のION発生を予防するには、疾患関連遺伝子に人種差が存在するため日本人を対象とした遺伝子多型解析を行う必要がある。日本人におけるION発生予測因子の発見に向けて、複数の遺伝子多型とION発生との間に関連が無いことを明らかにしたことは意義深い。
|