研究概要 |
関節内における血管新生は、主に炎症滑膜において注目され、関節破壊に関与すると考えられてきた。しかし、創傷治癒過程など、組織修復機転においても血管新生が必須であることから、関節軟骨修復における血管新生の役割を研究することは意義あることと考える。これまでに我々に血管内皮増殖因子(VEGF)が変形性関節症(OA)における軟骨変性および破壊に関与することを明らかにしてきた。本研究は変性軟骨が有する修復機転に着目し、本修復機転におけるVEGFの関与を明らかにし、VEGFおよび受容体発現の調整による軟骨修復の調節の可否について検討したものである。本年度はOA変性軟骨を覆う滑膜パンヌスおよび骨棘におけるVEGFの発現について検討した。転写レベルではこれらの組織は恒常的にVEGF121,VEGF165,VEGF181の3種のアイソフォームを発現していることをRT-PCRで確認した。また、これら受容体は変性部の軟骨細胞、変性部を覆う線維性パンヌス、骨棘で発現していた。本結果は変性軟骨、滑膜パンヌス、骨棘いずれの組織においてもVEGFおよび受容体が発現し、その作用点としてautocrine、paracrine、juxtacrineに作用する可能性が示唆された。これまで、VEGFのOA軟骨における発現はその変性、破壊に関与すると考えられてきたが、軟骨修復機転においても病態に関与することが示唆された。また、VEGFはin vitroにおいてOA滑膜細胞に対する走膜作用を有することが判明した。
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