変形性関節症の軟骨変性および修復機転における血管内皮増殖因子(VEGF)の役割について引き続き検討した。すでに我々は変性軟骨由来のVEGFがautocrineに作用した場合の効果について報告しているので、滑膜細胞とくに損傷軟骨表面を覆う滑膜パンヌスへの作用、損傷軟骨が修復された後の骨棘形成における作用を中心に検討した。平成19年度に滑膜パンヌスおよび骨棘におけるVEGFの発現、そしてVEGFの滑膜細胞への走化作用の結果をふまえ、本年度はin vivoにおけるVEGFの軟骨修復機転への関与、そしてVEGF作用阻害剤による影響を検討することにより、TGF-betaを介さない、VEGFの修復機転への直接作用を明らかにした。本年度はマウス関節炎モデルを作製して以下の知見を得た。Blomらの方法に準じて作製したコラゲナーゼ誘導関節炎モデルでは関節内で骨棘形成が確認され、VEGFはヒトと同様に軟骨変性度に比例して発現が高かった。また、変性した軟骨を覆う滑膜パンヌス、骨棘部線維軟骨組織において高発現していた。van den Bergらの方法によるTGF-beta誘導関節炎モデルにおいても骨棘形成と関節内線維化がみられ、骨棘部位にVEGFが発現していたことから、TGF-betaの骨棘形成作用の1部がTGF-betaを介していることを確認することができた。現在、これらのOAモデルマウスに可溶性flt-Fcまたは抗VEGFR-2抗体を投与した際の変化について検討中である。中間解析では、滑膜組織中の毛細血管の増殖が抑制され、軟骨の変性が抑制されている。また、骨棘の形成も抑制されている。現在、これらの新知見につき定量評価の方法を検討中であり、平成21年度中に学会発表およびに論文作成を完了する予定である。
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