研究概要 |
(1)バゾプレッシン(AVP)-eGFPトランスジェニックラットアジュバント関節炎発症における視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の時系列的効果 AVP-eGFPトランスジェニックラットに発症したアジュバント関節炎では関節リウマチと同様,血中バゾプレッシン濃度が上昇し,さらに血中コルチコステロン濃度も上昇していることが確認された。一方insitu法では,視床下部室傍核小細胞群におけるcorticotropine-releasing hormone(CRH)mRNAの発現は抑制され,eGFP mRNAの発現は室傍核小細胞群と大細胞群のなかで,大細胞群を中心に増加した。これらより,アジュバント関節炎におけるACTH分泌亢進には視床下部CRHではなく,バゾプレッシン産生の亢進が関与していることが明らかとなった。さらに,アジュバント関節炎においてeGFPの緑色蛍光が視床下部室傍核大細胞群と下垂体後葉において増強することも確認され,慢性炎症モデルにおける中枢神経系の神経内分泌反応(特にHPA軸の反応)をin vivoの状態で視覚的に評価する方法が確立された。 (2)AVP-eGFPトランスジェニックラットの急性終痛ストレスと炎症ストレスでのHPA軸の変化疾痛ストレスモデルとして5%ホルマリン液をAVP-eGFPトランスジェニックラットの後肢に皮下注射すると,注射後15分で血中バゾプレッシン濃度が上昇し,2時間後には元のレベルに戻ることが確認された。さらに,in situハイブリダイゼーション法で視床下部室傍核小細胞群におけるeGFP mRNAの発現が上昇することと,視床下部室傍核小細胞群と下垂体後葉でeGFP蛍光も増強していることが確認された。バゾプレッシンはストレスと密接に関連しているが,急性疼痛ストレスと慢性炎症ストレスではその発現様式に違いを認めることが明らかとなった。
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