オレキシンが麻酔に与える影響を明らかにするために、生後4-6週でオレキシン神経のみが特異的に脱落するorexin/ataxin-3マウスとオレキシン1受容体ノックアウトマウスに、主にGABAA受容体に作用するミダゾラムとα2受容体作動薬であるクロニジンを投与し、脳波・筋電図及び赤外線モニターを用いて入眠、覚醒に与える影響を調べた。 オスのマウスに実験1週問以上前にペントバルビタール腹腔投与麻酔下に脳波、筋電図記録用の電極を装着した。ミダゾラム1mg/kgまたはクロニジン100μg/kgを腹腔内投与し、腹腔内投与から入眠までの時間と入眠から覚醒までの時間を測定、同腹のマウスまたは同じ月齢のC57BL/6マウスをコントロールとし、比較した。実験はlight phaseにおこなった。 ミダゾラム投与によりorexin/ataxin-3マウスでは入眠までの時間と覚醒までの時間がともに有意に延長した。オレキシン1受容体ノックアウトマウスではミダゾラムの投与により入眠までの時間は有意に延長したが、覚醒までの時間には有意差はなかった。クロニジン投与によりorexin/ataxin-3マウスでは入眠までの時間と覚醒までの時間が有意に延長した。 以上の結果から、orexin/ataxin-3マウスではオレキシンが欠損しているため代償機転が働き入眠までの時間が長なり、覚醒を維持できないため覚醒までの時間が延長したと考えられた。一方オレキシン1受容体ノックアウトマウスではオレキシン2受容体を介している系が働いているために覚醒時間が延びないことが考えられる。
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