研究概要 |
心臓血管外科手術中使用される、希釈式自己血輸血が体内の血小板機能に及ぼす影響について調べた。 麻酔導入後,希釈式自己血貯血400mlを行い常温にて保存,自己血返血群,非返血群にわけ,人工心肺前,人工心肺中,人工心肺離脱後自己血返血前(プロタミン拮抗後,活性凝固時間回複)自己血返血5分後(拮抗30分後),自己血返血2時聞後,6時間後に動脈血採を行いサンプルとした。アグリゴメーターを用いて全血凝集能を,フローサイトメトリ法により血小板α顆粒膜上に存在する糖蛋自で血小板活性化に伴い膜表面に分布することが知られるP-セレクチン(CD62),血小板上のαIIbβ3が血小板活性化に伴い構造変化をおこした時に特異的にこれを感知するPAC-1の測定もあわせておこなった。また,血小板活性時に濃染顆粒から放出されるATPもルミノメーターを用いて測定した。 両群とも人工心肺離脱後自己血返血前,血小板機能は低下したが,自己血返血直後から自己血返血群たおいて凝集能の回復を認めた。しかし,非返血群は返血群に比べ血小機能の回復を認めなかった。 希釈式自己血返血には若干の血小板が含まれており,術中自己血返血によりで一旦機能低下に陥った体内血小板機能の再回復が考えられる。さらに,そのメカニズムを調べる事により術中、術後の体血機能変化という点についての解明が進み,人工心肺使用下の心臓毛術麻酔の分野にて大きなメリットをもたらすとともに,術中の血小板機能変化に関する理解が深まると期待される。さらに数日間の経過観察により, 術後の血栓止血機構の変化にも理解が進むと期待できる。
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