研究概要 |
フリーラジカルスカベンジャー、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-ワンの神経細胞に対する保護作用に関し、長期間暴露された低酸素に対する神経保護作用に関して、温度の差異による影響を調べ学会発表、論文報告(Shibuta S et al Br J Anaesth 2010 104 : 52-58.筆頭著者)を行った。この研究においては脳神経細胞を無酸素インキュベーター(ASTEC water jacket type multi-gas incubator, APM-30D)内に24時間留置し、形態学的に神経細胞の生死を判定したところ、細胞生存率は常温下では14.7%、32℃の低温療法下では63.0%であった。つまり、48%の脳神経細胞が低温療法により保護された。この結果を利用し、静脈麻酔薬やフリーラジカルスカベンジャー等の薬物療法及び低温療法の際にNAPK及びその関連シグナルの阻害薬であるJNK阻害薬、MEK1/2阻害薬、PDK-1阻害薬、フォスフォリパーゼC阻害薬、カルモジュリン阻害薬、IP3受容体拮抗薬を投与し、細胞生存率に対する影響を解析し、低温及び薬物療法の神経保護作用におけるMAPK系の関与を明らかにし、メカニズムを解明する事を目的とした。常温下で静脈麻酔薬チオペンタールナトリウム(400mM)を投与した場合の細胞生存率は65%であった。これにin vivoで神経保護作用が認められているMEK1/2選択的阻害薬U0126を付加したところ50nMで細胞生存率は68%と有意ではないが、若干の上昇が見られた。一方でU0126のアナログであるU0124を付加した場合の細胞生存率は62%で有為差は見られなかった。従って現時点ではチオペンタールナトリウムの神経保護作用に関してMEK1,MEK2が関与し、ERK1/2の活性化の下流にある酵素が影響を及ぼしている可能性は否定できない。
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