研究概要 |
近年、カルジオリピン(CL)などのリン脂質がリポポリサッカライド(LPS)とLPS結合タンパク(LBP)の結合を抑制することが報告されている。しかしながら、実際に急性肺傷害の動物モデルで予防効果を検討した報告は見られない。そこで今回は、CLを含む各種リン脂質のうちどのリン脂質が、LPS-LBP結合およびマクロファージ活性化を最も効率的に抑制するかを検討し、将来的な臨床応用を念頭において、LPSによるマウス急性肺傷害モデルを作製した。 無細胞系におけるLPS-LBP結合をELISA法で検出し、CL、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴミエリンによる結合阻害効果を判定した。RAW264マウスマクロファージ細胞をLPS処理し、活性化の指標として培地中の一酸化窒素(NO)を測定した。各種リン脂質を前処理し、活性化の指標に対する抑制効果を検討した。LPSを5週齢の雄性ddYマウスに腹腔内投与し、生存率、血中NO、腫瘍壊死因子(TNF)-αレベルおよび肺組織像を調べ、急性肺傷害を起こすLPS濃度を決定した。 CLとPIはLPS-LBP結合をそれぞれ82%、34%抑制したが、その他のリン脂質は抑制しなかった。マクロファージ活性化に対するリン脂質(CL、PS、PC、PE)の効果を検討したところ、CLが最も強い抑制効果を発揮したが、その他のリン脂質には効果が見られなかった。マウスにLPS(10,20,40,60mg/kg)を腹腔内投与し、投与後の生存率、血中NO、TNF-α量の増加および肺組織傷害を調べた結果、40mg/kgのLPS投与量でマウス急性肺傷害が起こることが明らかになった。以上の結果に基づき、CLを中心にマウス急性肺傷害予防効果を検討する予定である。
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