ミクログリアより放出されるBDNFをノックダウンすることで難治性疼痛を抑制することを目指して、本研究を立ち上げた。初年度の今年は、対象となるミクログリアより放出されるエクソンを検出することを目指した。 当初、BDNFは5種類のエクソンが報告されていて、我々もそれに基づき、ミクログリアからのBDNFエクソンのクローニングを目指したが、ごく最近BDNFのスプライスバリアントは12種類もあることがラットで報告された。そこで、我々のグループもターゲットを再度見直し、より多量にサンプルが採れる後根神経節におけるBDNFエクソンを確認することより研究を開始することとした。 まず、疼痛に際して特異的に増加しているBDNFエクソンを新しい12種類の分類に従い、以前の報告との違いを明らかにするために観察した。その結果、神経因性疼痛ラット(L5脊髄神経結紮モデル:L5SNL)において、L4後根神経節で全BDNFmRNAの著明な増加を認め、その主体を占めるのはエクソン-1 mRNAであることが明らかとなった。さらに炎症性疼痛モデル(CFA投与ラット)でも、同様にBDNFエクソン-1が増加の主体を占めている事が明らかとなった。 次に、特異的エクソンのノックダウンを目指すべく、培養細胞を用いた研究を開始した。まず、培養細胞でもターゲットとするBDNF-1エクソンが特異的に疼痛刺激で増加することを確認する必要があり、その研究を実施した。すなわち、培養後根神経節細胞を使用して、炎症が生じた際刺激物質となる神経成長因子(NGF)を投与し、BDNF産生を観察した。その結果、予想通りNGF刺激で全BDNF mRNAは増加し、その中でもエクソン-1が特異的に増加していることが明らかとなった。 以上の結果は学術誌および国際学会で発表し、現在、特異的に増加したエクソンのノックダウンを目指している。
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