前年までの研究で神経因性疼痛ラット(L5脊髄神経結紮モデル: L5SNL)において、L4後根神経節で全BDNF mRNAの著明な増加を認め、その主体を占めるのはエクソン-1mRNAであることが明らかとなった。さらに炎症性疼痛モデル(CFA投与ラット)でも、同様にBDNFエクソン-1が増加の主体を占めている事が明らかとなった。 そこで、BDNFエクソン-1の合成を阻害する事で、疼痛モデルにおいて鎮痛効果が得られるかを検討した。合成阻害の候補としてsiRNAおよびDNAデコイを作成することとした。まず、当該年度ではsiRNAより着手するため、BDNFエクソン-1に対するsiRNAを作成した。 ラットのクモ膜下にカテーテルを挿入し、siRNAを前もって導入した群とコントロール群を作成した。それぞれの群に対して、CFAを投与して炎症痛を惹起させ、疼痛行動を評価した。その結果、残念ながらBDNFエクソン-1に対するsiRNAのクモ膜下投与は炎症性疼痛に対しては鎮痛効果を示さなかった。 次に慢性疼痛モデルとしてL5SNLを作成して、BDNFエクソン-1に対するsiRNAの鎮痛効果を炎症疼痛と同様に検討した。慢性疼痛に対しても、コントロール群に対してsiRNAの投与群は有意な鎮痛効果は認められなかった。そこで、BDNFエクソン-1に対するDNAデコイの作成を目指すこととした。
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