研究概要 |
本研究では,脳虚血後の血管反応性の変化に焦点を当て活性酸素種の関与を明らかにし,フリーラジカル除去剤の修飾作用について検討した。本年度は,一過性脳虚血後の脳血管拡張および内皮依存性弛緩反応の減弱のメカニズムについて明らかにし,エダラボンによるこれらの反応への影響について検討した。 イソフルラン麻酔下に家兎をスフィンクスポジションとし,頭蓋有窓法を用いて脳軟膜動脈を観察した。脳虚血は,血圧を50mmHg未満に調節し頸部に巻いたネックターニケットを20psiで加圧して作成した。脳虚血再潅流10分後より脳血管拡張(10分間の脳虚血で虚血前の50%程度)がみられ,30分後ピークに達し(60%程度),1時間後まで持続した。虚血時間を変えても(5,10分)同様の血管拡張がみられたが,時間が長いほど拡張の程度が強い傾向にあった。この血管拡張はsuperoxide dismutase (SOD), catalase, deferoxamineの虚血前投与にて抑制される傾向にあったがいずれも有意な抑制ではなかった。また,10分間の虚血前後でアセチルコリン(10^<-6>M)を窓内に投与し血管反応を検討したところ,虚血後にアセチルコリンによる脳血管拡張は減弱し(虚血70分後で15%程度),SODおよびcatalaseの虚血前窓内投与にて減弱は抑制された。Deferoxamine, ebselenの虚血前投与やエダラボンの虚血前投与では反応に変化はなかった。 以上のことから,一過性脳虚血再潅流後の血管拡張は虚血早期より約1時間後まで継続し,内皮依存性弛緩反応は減弱することがわかった。血管拡張の機序として活性酸素種が関与しているかどうかは明らかでなかった。内皮依存性弛緩反応減弱の機序についてはsuperoxideや過酸化水素の関与が考えられた。また,エダラボンは一過性脳虚血後の内皮依存性弛緩反応減弱に効果を示さなかった。
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